初めて聞く名前「オアカアジ」
オアカアジというお魚を入手した。初めてきく名前だ。「おいしいよ。」とオススメされた。キレイな赤の尾びれが美しい魚だ。
そして食べた。疑問に思ったことがあった。
「なぜこの魚はマイナーなんだろう?」、と。
とてもキレイで美味しい魚だ。その味は、なかなか経験したことのない味だった。すさまじい脂の満足感と、青魚特有の清涼感。
そのオアカアジについて書いてみたい。
オアカアジのさばき方
オアカアジはムロアジの仲間だ。ぜいごがついているのでそれを落とさなければいけない。身が厚く、皮も引きやすいのでさばく難易度は高くないと思う。
是非動画をご覧ください!
オアカアジの料理
オアカアジの刺身
脂がのっていておいしい。皮目の脂の層が厚い。だけどくどくはない。
血合いが大きいが、全く臭くなくてむしろさわやかな味だ。新鮮さが重要なようだ。
マアジの刺身とはずいぶんと味が違うように感じた。マアジの味わいを期待して食べると、「なんか違う」という感じになるかもしれない。むしろサバの刺身の味わいに近いかもしれない。
とにかく濃厚な舌触りと脂だが、さわやかな印象だった。
オアカアジの味噌汁
アラはお味噌汁にした。豊富な脂と味噌が良く合い絶品だった。
オアカアジという魚について
オアカアジの分類上の位置と主な利用方法
オアカアジは、ムロアジ属の一つだ。アジ科の中でもマアジとは別の属の魚だ。
ムロアジは、干物やかつお節のようなアジ節(ムロ節)にして利用される。「くさや」の材料もムロアジだそうだ。海外でも利用されており、例えばベトナムでは魚醤(ニョクマム)の材料として利用されているという。
また、ムロアジは大型魚類を漁獲する際の釣り餌としても利用されているという。
オアカアジの分布
また、ムロアジ類は、日本近海では日本海と東シナ海に多く分布しているらしく、中国、韓国の漁船も多くの漁獲をしているとのことである。実は人気の魚なのかもしれない。
オアカアジは、ムロアジ類の中でも、「北緯 30 度以南の大陸棚縁辺部 200 m 等深線の内側沿いに分布し、沿岸水域には出現しない」(注:岸田(1974))ということである。日本では、オアカアジを特に狙った漁はなされていないようだ(もしくは多くはないようである。)。
オアカアジはなぜマイナーなのか
オアカアジが鮮魚としてマイナーなのは、一つはその「足のはやさ」にあるのだろう。鮮度維持が難しい魚で、かつては港町でしか鮮魚としては利用されていない時代があったようだ。そして、ムロアジの多くが干物などに利用されていたことから、そのイメージが定着しているというのもあるかもしれない。
また、安定した漁獲がないというのも原因の一つかもしれない。比較的沖合に分布する魚であって、回遊性も高いようなので、狙って取るのが難しい魚なのかもしれない。
オアカアジは今後スターになりうる存在
しかし、新鮮なオアカアジのおいしさは、一度知ってしまうと忘れられない。私はもう一度食べてみたいと思うし、オアカアジを魚屋で見かけたら買うだろう。
人によって好みが分かれる味かもしれないが、その脂の乗りとさわやかだけど濃厚な食味は、好きな人にはたまらないと思う。サバの刺身が好きな人はきっと好きだと思う。
オアカアジをマアジだと思って食べると違和感がある。マアジの味を期待するとがっかりするかもしれない。しかし、それは間違いだ。これは「オアカアジ」という全然別の食べ物だ。脂の乗った最高の青魚の味がここにある。これがマイナーであることは、ちょっと意味が分からない。
特に関東ではあまりオアカアジを見かけないようだ。しかし、近時の流通と冷蔵技術の凄さからすると、近い将来このお魚はスーパースターになっているかもしれない。私たちの多くはまだこの青魚の脂のうまさを知らない。
でも日本人の多くが知っていることがある。サバの焼き魚に箸を入れたとき、想像以上の脂がしみ出てきて驚いた経験はあるはずだ。そして、それを口に放り込んだとき、信じられないほど美味い液体が口の中で舞い踊る感覚を知っているはずだ。
そのようなすさまじい脂が乗った魚を刺身で食べることが可能かもしれないのがオアカアジだ。うまくないはずがない。
最近は東京都内のスーパーなどでもオアカアジが並んでいることがあるようだ。新鮮なオアカアジは、近いうちにスーパースターになっているかもしれない。もうすでに、その美味しさを知っている人は知っているのかもしれない。むしろ知っている人は昔から知っているのかもしれない。
参考文献
西海区水産研究所「令和元(2019)年度 ムロアジ類(東シナ海)の資源評価」http://abchan.fra.go.jp/digests2019/details/201946.pdf